(引用開始)
ミトコンドリア
がんとミトコンドリア
ところで、2008年筑波大学の林純一らが、がんの転移能獲得という悪性化にミトコンドリアが関与している[34]ことを、マウス肺がん細胞の細胞質移植による細胞雑種の比較により、ミトコンドリアDNAの特殊な病原性突然変異によってがん細胞の転移能獲得の原因になることを発見し、ヒトのがん細胞株でもmtDNAの突然変異ががん細胞の転移能を誘導しえることをあきらかにし、すくなくともmtDNAがATP合成以外の生命現象にも関与するとを明らかにした。
また、林らによるとmtDNAの突然変異には活性酸素種(ROS)の介在が重要であり、ROSを除去すれば転移能の抑制が可能ではないかとしている。がんの転移能の獲得メカニズムは複雑であり、様々な要因が考えられるのでこれはその要因の一つにすぎない。
ミトコンドリア病
1980年代から脚光を浴びるようになった。
障害の起こる部位に因んで、ミトコンドリア脳筋症、ミトコンドリアミオパチーとも呼ばれる。
ミトコンドリア脳筋症の3大病型
- 慢性進行性外眼麻痺症候群(CPEO) - 眼瞼下垂、外眼筋麻痺。発症年齢は幅広い。多くの場合ミトコンドリアDNAに欠失がある。
- カーンズ・セイヤー症候群(Kearns-Sayre syndrome、KSS):外眼筋麻痺、網膜色素変性、心伝導ブロックが三主徴である。筋力低下などを併発する。
- 赤色ぼろ線維・ミオクローヌスてんかん症候群(福原病、マーフ、ragged-red fibreを伴うミオクローヌスてんかん)(MERRF):ミオクローヌス、痙攣、小脳症状、筋症状が主。子供に多い。知的退行、歩行障害に至る。40%に心筋症を合併。福原信義らによって1980年に新潟で発見された。ragged-red fibre(赤色ぼろ線維)は異常ミトコンドリアの染色像である。母系遺伝。
- ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様症候群(メラス、卒中様症状を伴うミトコンドリア脳筋症)(MELAS):脳卒中様の発作を起こすことが特徴。頭痛、嘔吐が初発症状であることが多い。筋力低下、知能障害などが起こる場合もある。小児に多い。血清・髄液中の乳酸値が高い。後頭葉に多発性脳梗塞様のCT、MR所見を認める。母系遺伝。
- Leigh脳症(リー脳症) - 乳幼児期から精神運動発達遅延、退行を起こす。血中、髄液中の乳酸、ピルビン酸の濃度が高いことが多い。脳の断層撮影で、大脳基底核や脳幹に左右非対称な病変が見られる。
- ミトコンドリア異常を原因とする心筋症 - 心筋の肥大を示す。
- Leber病(レーバー病) - 視力低下が主症状である。幅広い年齢層に発症するが、20歳前後に発症するケースが多く、男性の比率が高い。多発性硬化症に似た病変や、ジストニアの合併を伴う場合もある (Leber's plus)。ミトコンドリア病の中で最初に発見されたものである。
- ミトコンドリア糖尿病 - ミトコンドリアの機能異常によるインスリン分泌障害で糖尿病になる。難聴を伴うことが多い。脳や筋肉の障害はまれ。
- Pearson病 - 貧血、汎血球減少症をきたす。乳児期に発症する。高乳酸血症、代謝性アシドーシスなどを伴い、生後まもなくから、血液の障害、特に重症貧血が起こる。頻繁な輸血が必要となる場合がある。1979年にPearsonらが発表、1988年にミトコンドリアの異常であることが証明された。(初期はDNAの単一塩基異常とされたが今はその部位は関係ないとされている)
MELAS
症状
5~15歳で好発し、知能低下や感音性難聴、低身長、易疲労性、心筋症、筋力低下といったミトコンドリア病に共通する神経・筋症状のほかに、繰り返す脳卒中様発作(頭痛・嘔吐・痙攣・意識障害・片麻痺など)が特徴的で、この発作時にCTやMRI(拡散強調画像)をとると脳梗塞に類似した病変を認める(ただし、この病変の発症機序は不明)。
検査所見
MELASに特徴的な所見としては、後頭部の脳梗塞類似病変や脳波での焦点周期性てんかん型放電がある。
ミトコンドリアDNA
また逆に細胞が必要とするエネルギーを酸素から作り出せるのはミトコンドリアの働きによっており、細胞それ自体もミトコンドリアなしには生存できない。これらのことはミトコンドリアが細胞内共生由来であるという仮説の傍証となっている。
さらに、近年ではミトコンドリアDNAにおける変異が、がんの転移能に影響を与えているという報告もある。(Hayashi et al, 2008)
2011年08月26日
第63回「内部被曝① 放射線のミトコンドリア攻撃が原因か 慢性疲労症候群」
一方体内に取り込まれた放射性物質は、ここではガンマ線ばかりでなく、アルファ線やベータ線が強力な影響力を発揮する。ただそれらの飛距離は短く、細胞中ではアルファ線はわずか40ミクロン(ミクロン=1000分の1ミリ)、ベータ線でも1cmだ。
しかし、1か所に長く留まるために、継続的な局所集中被曝が発生する。
細胞核では攻撃により遺伝子の損傷という問題が発生するが、細胞質内では、第55回で述べたヒドロキシラジカルなどによって、ミトコンドリアなどが損傷を受ける。
エネルギー生成装置がやられれば、力が出なくなるのは当然の帰結だ。
熊本日日新聞
2004年3月24日付夕刊) ミトコンドリア病 治療と予防にアルギニン有効
特定疾患(難病)ではないものの、それに近い疾患に「ミトコンドリア病(ミトコンドリア脳筋症)」がある。症状は多様だが、患者の60%~70%は三大病型に属するとされる。小児から十歳代にかけて発症例が多い「メラス(MELAS、脳卒中様症候群)」は、三大病型の中で最も多く、脳卒中に似た症状が現れる。
(中略)
■見逃しやすい
「メラスは、小児期の患者が症状をうまく表現できないため見逃しやすい。頭痛や難聴、低身長、吐きやすさ、運動おんちなどがあり、母親系統に片頭痛や糖尿病などがあれば、一度はミトコンドリア病を疑う必要がある」。同研究班長の古賀助教授は指摘する。
■見逃しやすい
「メラスは、小児期の患者が症状をうまく表現できないため見逃しやすい。頭痛や難聴、低身長、吐きやすさ、運動おんちなどがあり、母親系統に片頭痛や糖尿病などがあれば、一度はミトコンドリア病を疑う必要がある」。同研究班長の古賀助教授は指摘する。
ミトコンドリア(細胞内小器官)は、体の細胞中にあり、そのエネルギーをつくる。細胞の核DNAとは別に、独自のDNAを持ち、母親からだけ子供に遺伝する。細胞の核DNAと比べ、その複製に間違いが多いとされる。約一万六千ある塩基配列のうち、既に百八十カ所以上の点変異が判明している。点変異の場所次第では、遺伝子に不具合が起こり、エネルギーづくりに影響が出ることもある。
■メラスは32%
ミトコンドリアの異常は、特に細胞内でエネルギーを大量消費する脳・中枢神経系や筋肉の病気となって現れやすい。
ミトコンドリアの異常は、特に細胞内でエネルギーを大量消費する脳・中枢神経系や筋肉の病気となって現れやすい。
いろんな臓器に障害が出ることも多く、日本では糖尿病を含めると患者は十万人を超えるとも言われる。
ただ古賀助教授は「糖尿病患者約六百五十万人の二割(百三十万人)はミトコンドリア病だろう。しかし症状が多様で専門家が少なく診断が難しい。
片頭痛持ちや低身長のミトコンドリア病患者は、どのぐらいか分からない」と話す。
(中略)
「メラスの平均像は、小学校高学年で脳卒中の小発作を起こし始め、何回か大きな発作を起こして脳が損傷し、生活の質(QOL)が落ちて死に至ることが多い」と古賀助教授。
小発作の症状は、目のちらつき(後頭葉の血流低下)、半身けいれん、一過性の失明などがあるという。
ミトコンドリア脂肪酸酸化異常症(FAOD)
http://hobab.fc2web.com/sub6-FAOD.htm
http://hobab.fc2web.com/sub6-FAOD.htm
(引用終わり)
たくさん引用しましたが、問題になっている病気と、似ている点が多いと思えませんか?
ガン
糖尿病
高脂血症
心筋症 - 心筋の肥大
発達障碍に繋がりそうな症状
てんかん
(引用開始)
多発性硬化症
中枢性脱髄疾患の中では患者が最も多い。北米、北欧、オーストラリア南部では人口10万人当たり30〜80人ほど罹患しているが、アジアやアフリカでは人口10万人当たり4人以下で、人種によって罹患率に大きな差があることが特徴である。
南米、南欧、オーストラリア北部はその中間である。全体としては高緯度のほうが罹患率は高く、日本国内でも北海道と九州では北海道のほうが高い。日本での有病率は増加してきており、10万人あたり8 - 9人、人口辺り約12,000人程度であることが2006年神経免疫班会議で報告されている。
罹患のピークは30歳頃であり、約80%が50歳までに発症する。また女性に多い。
原因
- 遺伝
- 感染
- 再発と寛解を繰り返すという病態からウイルス感染が疑われている。しかし、今まで報告されたウイルスは数多くあるものの、どれも特異的な関連ははっきり示されてはいない。
- 自己免疫
- 根拠は不十分であるものの、免疫異常を疑わせる所見がいくつか見られる。以下にその一例を示す。
(引用終わり)
原因に遺伝とありますが、文章を読むと遺伝とは思えない記述です。
むしろ、羅患率の高い所に行くと発症するなら、「環境」「後天的要素」
が強いように思えます。
(続く)